私にとって、「そば打ち」はこれまでの生き方を伏線回収し、人生を再生させる「自己表現の形」そのものです。一度は手放した「そば職人」への夢を、「出張そば打ち(講座)」として形を変えて再開したところから、第二の人生は静かに動き始めました。「そばを打つ」という行為は、私にとって技術以前に、自分と向き合い、こころが自然と「ととのう」大切な時間です。粉と水だけのシンプルな素材が、手の感覚と呼吸を通して“そば”になっていく。そのプロセスは、五感がひらき、自分の内側とつながる体験であると同時に、人とのつながりに想いを馳せる時間だと感じています。

これまで25年間「食」の業界で働き、研究開発・現場・マネジメントを経験してきました。その過程で、手打ち蕎麦職人を目指したこともあります。現在はライフ&キャリアシェルパとして、人がより生きやすく、より自分らしく生きるための方法や「在り方」を伝え、自己対話のサポートをしています。その活動の軸のひとつとして、「こころととのう」そば打ち講座を位置づけています。

私のそば打ちは、特別な道具がなくても、ご家庭の調理器具で、子どもからご高齢の方まで失敗なく体験できます。実際、これまで“そばにならなかった”ことは一度もありません。たとえ不揃いでも、自分で打ったお蕎麦を味わう体験は、何ものにも代えがたい至福の時間です。そこには自然と「対話」の場が生まれます。

これまでに、愛媛県内はもとより、岡山、滋賀、福岡、沖縄で出張そば(講座)を届けてきました。活動を始めた当初は、125ccのバイクに道具を積み、行ける範囲へ出向くところからのスタートでした。昨年は「キャンプde蕎麦打ち」に挑戦し、仲間にお裾分けしました。また、年末には年越し蕎麦をお世話になった方々へギフトしたり、母の友人宅(ガン闘病中の旦那さんのために)へお届けしたこともあります。そして昨年秋、念願だった出張蕎麦打ち専用カーを購入し、全国を巡る夢を描き始めました。「ライフシェルパ号」と名づけたその車での最初の受講生は84歳の母です。愛媛から福岡の実家に戻り、母と一緒に「そば打ち×しつもん」の時間を過ごしました。そばを打ちながら2026年を想う時間。これまで、そして今も心配をかけている母への、ささやかな恩返しになったと感じています。

私が増やしたいのは、そば打ちができる人の数ではなく、「自分らしく人生を楽しむ人」です。家族のために打つお蕎麦、子どもや孫と一緒に打つお蕎麦。そば打ちが特別な行事ではなく、生活の一部としてある暮らし。そしてその中に、「こころの声を聴く時間」が自然と存在すること。それが、私の大切にしている想いです。私は、自分を表現することが優しさの循環を生むと、そば打ちを通して伝えています。